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 けっきょく、綾は右隣にいた男子学生──藤田 成貴(せいき)に口説き落とされて、その日の昼食を一緒に食べることにした。  学食の大きなカフェテラスにとりあえず行ってみたが、昼休み時間帯なのと、新学期のはじめなのとで、行列が外までできており、とても入れたものではなかった。 「しゃあないなぁ。じゃあ、商店街を歩いて空いてる店、探そうか」  藤田は言葉とはうらはらにうれしそうでもあった。大学のキャンパスを囲むように商店街があるが、そのうちの少なくない割合が学生向けの飲食店であることは、綾もこれまでに大学近辺を歩いて確認していた。  道なりに二人で並んで歩くと、驚いたことに向かいから歩いてくる男子学生の中から、藤田に声をかける人間が少なくない。これだけの人混みの中にそんなに知り合いがいるものなのかと綾は驚きとともに呆れる。 「お、藤田」 と言って軽く手を挙げるだけの人もいれば、 「やったじゃん」 とやや露骨に意味ありげに笑っていく人もいる。 「藤田くん」 と、声をかけて手を振る女子学生もいた。  綾はこれまでの自分に対する周囲の注目とは違う、かなり陽性の人付き合いの世界が藤田の周りにはあることに気がついた。  『やったじゃん』と言った男子は綾の姿を見て言っている。いわば藤田が綾のようなきれいで上品な彼女を早くもつかまえてるな、というようなニュアンスだ。綾は嫌悪は持たなかったが、あまりに開けっぴろげなことに驚いた。 「おれ、系列だからさ」  藤田は少しだけ照れ臭そうに説明した。  『系列』というのはこの大学の系列の高校から来たという意味だ。事実上内部進学で、一般入試はしていないということだ。同時に、その時からの知り合いも多いということらしい。  綾にしてみれば、「こういうものなのか」というくらいの認識だが、藤田はまるで一般入試の新入生よりも半歩前を歩いているかのような感じで、やや高みに立っているようなのだ。  半ば公然と『裏口入学』と言われる人たちである。  そういう人の心理が綾はちょっと面白くなってきた。  

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