口数が少ない婚約者についての悩み相談

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◇ 「はい」 ランデン様の手から、大きな花束が差し出された。 今日のお花はピンク色のガーベラ。 アネッサとは、私の悩み相談後もしばらくお茶と談笑を楽しんだ。久しぶりの再会だったので、話題が尽きることなく気づけばもう夕方。彼女が帰っていったのと入れ替わるように、花を抱えたランデン様がいつも通り我が家を訪れた。 彼と会うときは決まって屋敷の前―― つまり、外。 馬から降りたところを私が出迎えて、そこでほんの少しの会話をしたらすぐに帰ってしまうのだ。 雨の日であってもこれは同じことだった。 「今日も素敵なお花をありがとうございます」 私がお礼を述べると、彼はニコリと微笑む。その顔は一枚の絵画のように美しい。近くにいる侍女が鼻血を拭っているのが見える。 問題はここからだ。 このあと彼が口を開くことは、今までの経験上、まずない。 このままだとずっと沈黙が続くだけので、例のごとく私から話題を振る。 「お花はいつも同じお店で買ってらっしゃるのですか?」 「いや」 「そうなんですね。いつも異なる種類のお花を持ってきてくださるから、飽きません。私、お花は大好きなので、とても嬉しいです」 これは本当のこと。特定の花が好きなわけではなく、花全般が好きなので、こうやっていろんな種類のものをプレゼントされると、実のところとても嬉しかったりする。 私としては、彼の優れた容姿よりも、こうしたプレゼントをしてくれる姿勢のほうが好感度が高い。 ランデン様は私の喜んでる姿に満足したのか、踵を返し早々に帰路に着こうとする。今回も文字通り顔を見に来ただけらしい。 「じゃあ、また、三日後に」 「あ、待ってください」 慌ててランデン様の服を引いて、彼の帰りを引き止める。 「あ、すいません」 「……どうした?」 おお、初めて疑問形で問いかけてくれた!? 「ええと、今度、ランデン様の職場に見学に行かせて頂いてもよろしいでしょうか?」 「なぜ」 「なぜって、ちょっと興味がありまして……」 なぜと言われるとは。またも疑問形だわ! こんな些細なことに感動してる自分がいる。 アネッサの言う通り、ちょっと普段とは違うことを聞いてみて良かったかも。 「……来ないでくれ」 「え」 「また、三日後に」 私の言葉を遮る様にして、今度こそ彼は馬に跨ってそのまま颯爽と立ち去ってしまった。 「やっぱり、迷惑よね……」 でも、彼の言葉のレパートリーを聞けて、私の心はいつもと違ってふんわりと満たされていた。

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