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「はい」
ランデン様の手から、大きな花束が差し出された。
今日のお花はピンク色のガーベラ。
アネッサとは、私の悩み相談後もしばらくお茶と談笑を楽しんだ。久しぶりの再会だったので、話題が尽きることなく気づけばもう夕方。彼女が帰っていったのと入れ替わるように、花を抱えたランデン様がいつも通り我が家を訪れた。
彼と会うときは決まって屋敷の前――
つまり、外。
馬から降りたところを私が出迎えて、そこでほんの少しの会話をしたらすぐに帰ってしまうのだ。
雨の日であってもこれは同じことだった。
「今日も素敵なお花をありがとうございます」
私がお礼を述べると、彼はニコリと微笑む。その顔は一枚の絵画のように美しい。近くにいる侍女が鼻血を拭っているのが見える。
問題はここからだ。
このあと彼が口を開くことは、今までの経験上、まずない。
このままだとずっと沈黙が続くだけので、例のごとく私から話題を振る。
「お花はいつも同じお店で買ってらっしゃるのですか?」
「いや」
「そうなんですね。いつも異なる種類のお花を持ってきてくださるから、飽きません。私、お花は大好きなので、とても嬉しいです」
これは本当のこと。特定の花が好きなわけではなく、花全般が好きなので、こうやっていろんな種類のものをプレゼントされると、実のところとても嬉しかったりする。
私としては、彼の優れた容姿よりも、こうしたプレゼントをしてくれる姿勢のほうが好感度が高い。
ランデン様は私の喜んでる姿に満足したのか、踵を返し早々に帰路に着こうとする。今回も文字通り顔を見に来ただけらしい。
「じゃあ、また、三日後に」
「あ、待ってください」
慌ててランデン様の服を引いて、彼の帰りを引き止める。
「あ、すいません」
「……どうした?」
おお、初めて疑問形で問いかけてくれた!?
「ええと、今度、ランデン様の職場に見学に行かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「なぜ」
「なぜって、ちょっと興味がありまして……」
なぜと言われるとは。またも疑問形だわ!
こんな些細なことに感動してる自分がいる。
アネッサの言う通り、ちょっと普段とは違うことを聞いてみて良かったかも。
「……来ないでくれ」
「え」
「また、三日後に」
私の言葉を遮る様にして、今度こそ彼は馬に跨ってそのまま颯爽と立ち去ってしまった。
「やっぱり、迷惑よね……」
でも、彼の言葉のレパートリーを聞けて、私の心はいつもと違ってふんわりと満たされていた。

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