「妻となる女性がいらっしゃる日くらい、お休みにしましょうと進言したのですがね……」
肩をすくめたアンソニーに、レティシアは苦笑を向けた。
フェオドールからすると、レティシアよりも仕事が重要なのだろう。
領主としては素晴らしい判断だと、素直に称賛できる。
「それだけ領地を大切に思っているということですよね。……それに、私よりも領地が大切なのは当たり前です」
こちらが突然押しかけて来たようなものだ。レティシアがフェオドールを責めることなどできやしない。
たとえ婚約の了承をもらっても、すぐに押し掛けるなどあってはならないことだから。
「決してそういうことではございませんよ」
アンソニーの返事に気を遣わせてしまったと気づき、レティシアは身体を小さくした。
思っていても、こんなこと口にするべきではなかった――と、心から反省する。
「さぁ、こちらがお嬢さまのお部屋になります」
気を取り直したアンソニーが扉を開けると、そこには開放感のある空間が広がっていた。室内の家具は必要最低限のものだけで、言い方を変えると殺風景だった。
「家具はお嬢さまの好みに合わせて注文するようにと聞いております」
「わざわざそんなことを?」
小首をかしげて問うと、彼は笑ってうなずく。
「少しでもお嬢さまの気が休まる空間にしたいとおっしゃっておりました」
自然と足を踏み出していた。
(殺風景なのは、私への思いやりからだった……?)
正直なところ、家具にこだわりなんてない。使い心地さえよければ、ほかに望むこともなかった。
けど、フェオドールはここをレティシアの気が休まる空間にしたいらしい。
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