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本棚に追加推し争奪戦 4
「随分偉くなったもんですねぇ!? ついこの前まで、これやって下さい。お願いしますって俺らに頼りきりだった癖に!」
「これは俺達の仕事じゃねーんだけどー。って文句たらたらだったの知ってるんだぞ! 上野が来てからお前らに頼むことも無くなって清々しただろうが! 嫌がってた癖に今更近付いて来んな!」
「ちょっと! そんなつまんない仕事を上野さんにさせないで下さいよ! やっぱりこっちに来た方が会社の為にも上野さんの為にも良い! 上野さんが好きそうなもっと深いデータ、こっちは幾らでも提供できるし!」
「俺達だって自分でできるように勉強してるわ! 最低限の迷惑しか掛けないようにしてるっつーの!!」
「その最低限すら上野さんの負担でしょうが!」
「お前らだって上野に頼るつもりの癖に何言ってやがる!!」
小声ではあるけれど叫ぶ先輩と情シスの攻防戦は終わらない。司は何が起こっているのか分からずにぽかんとしている。
「そもそも上野は経営企画部を志望して入社してきたの! それをねじ曲げるとかお前ら鬼か!」
「入社して、もっとやり甲斐のある仕事が見付かれば背中を押すのが先輩ってもんでしょうが!」
「こっちだってやり甲斐は山ほどあるわ! 上野は分析で生きるの!」
「DXだって上野さんの力、遺憾なく発揮できるし! 俺らがサポートすれば無敵だし!」
「大体、上野さんに話もしないで先輩が勝手に決めるとかおかしいですよ!」
「そうだそうだ!」
「何言っても無駄ーー! どうせ上が許す訳…あ、やべっ」
「うちの部長だってやる気満々…あ、そうだった!」
「やばっ…」
三人は唐突に黙った。経営企画部の部長…引いてはその上から、上野を絶対に目立たせるな。社内でも不必要な人間には勘づかれないようにしろ。どこから情報が漏れるか分からないんだから。と口止めをされていたんだった。
情報システム部も同じく箝口令が敷かれていた。こちらは役員の思惑など知らず存ぜずだけど、司の能力が社内にばれれば都合良く使おうとする奴らが絶対に押し寄せてくる。そんな事は許さない! 自分達が守らなきゃ! と、一致団結していたのである。
…やばい。と、周囲を見回してから三人は白々しく呟いた。
「……まぁ…そうですね。仰る通りですよ。膨大なデータの整理は本当に手が掛かるので、これからも助力願います…」
うちにはプログラミングで魔法のようにデータを整えられる新人も、役員まで頼っているアナリストもいませんからねー。本当に大変だー。…の代わりに先輩は言った。でも顔が引き攣っているし情シスの方を見ない。
「…そうでしょう。そうでしょう。そうやって大人しくしてれば良いんですよ。しょうがないから、たまには助けて上げますよ。こうじゃないとかいう文句も程々にして下さいよー…」
「こっちだって大変なんですからねー…」
そうそう。こっちのデータまで綺麗に整えてくれる優秀で優しい子なんて存在しないからね。これからも不自由しながらやっていくしかないんですよ。我々は。暗にそう言いながら情シスも明後日の方を見ている。司を見ちゃ駄目だ。あの子は何にも知らないんだから。
「とにかく、上野。戻るぞ」
「え? あの…?」
そして情シスを見るけれど、良いから行きなさい。大丈夫だから。と、うんうん頷いている。早く逃げてー。
その態度に不思議そうな顔をした司は、ぺこりと頭を下げて先輩を追った。良い子。あー行っちゃった。今度はこっそり情報システム部に誘い込んで内々で盛り上がろう。泣く泣く座り直して二人は不貞腐れたように呟いた。
「あー。本っ当に苛つくわー」
「分かる」
何の喧嘩だったのか分からないけれど、まだまだお怒りのご様子。こえーよー。と、肩を竦めた愚痴り組にこんな声が聞こえてくる。
「マジで何回言えば理解すんのかなー。こっちは資産管理ツールで監視してるんだから変なソフト入れればすぐに分かるって言ってるのに。性懲りも無く何度も何度も」
「リテラシーも理解できないのに、何で自信だけはあるんだかねー」
「そもそも『フォロー役に徹しろ』なんて、俺だったら口が裂けても言えねーわ。勘違い甚だしい」
「だってうちら、フォローの為にいるんじゃないしねー…」
そして情シスは振り返った。目が合ったのは言わずもがな、営業部の愚痴り組。お前らのことだよ。お前らの。さっきの話も全部聞こえてたからな。司が見えてどうでも良くなったけれど、奪われた恨みもあって怒り倍増。理不尽だなんて言わせねーよ? そもそもお前らが悪いんだからな。

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