純は立ち上がり、再び火宮との戦闘を始める。
「本当にこれで覚醒できるのか?」
二人の戦いを眺めながら、つぶやく百合愛。すると阿波野が答えた。
「尾道はこの方法で覚醒の予兆を見せた。可能性はある」
限界まで活力を与えられた状況下での戦闘。それが純へ課された修行だった。
「でも、それは尾道に合ったやり方だろう? この特訓は、尾道が受けるべきだ」
「ごもっとも。だが、総隊長いわく、尾道には別のやり方が適切だと話していてな」
総隊長。時近のことだ。時近の考えることはわからないな、と百合愛はため息を吐いた。
「尾道はどんな特訓をしているんだ?」
「さて、な。あれを、特訓や修行と呼んでいいのやら」
どういう意味だろう。百合愛は首を傾げた。
☆
鳥のさえずりが聞こえた。大きな木の下で、時近と尾道、それから龍のギンが自然を感じていた。人工的に作り出した鳥居の中ではあるが、環境を整え、現実と遜色のないものになっている。穏やかそのものだ。
ギンの体を枕にして時近は寝転がっていた。かれこれ三十分が経過していた。
我慢の限界だ。尾道は、寝転がる時近に、意図を尋ねた。低い声で、怒りが込められていることが伝わるように。
「おい。なんのつもりだ?」
「どうかしましたかー?」
気持ちよさそうに、目を瞑りながら話す時近に、本当に怒りが沸きかけた。
「戦うんじゃねえのか。俺は、そこの龍と戦闘でもするもんだと思ったから、ついてきたんだ」
「それはまだ早い。あなたは、もっと自分と向き合うべきです」
「は?」
意味がわからない、と尾道の表情が物語っていた。時近は上半身を起こした。
「聞きましたよ。尾道さん。あなたはごろつきだったそうですね」
「ああ」
「それで、魔衣を手に入れて、人狼として暴れていた。結果、我ら衣兵隊と対峙して、敗北。本来なら牢屋にいる身」
「それが、なんだって言うんだ」
「どうして負けたのだと思いますか?」
思い出すだけで反吐が出そうだ、と尾道は目を細めた。純に、相打ちに持ち込まれたことが蘇る。しばらくして、尾道は答えた。
「相手の数が多かったから、だろうな。こっちは魔衣を扱えたのが俺だけだ」
「ふむ。なるほど。一理ある。でも、やりようはあったと思います」
「あ?」
「例えば、人狼に化けずに戦う、とか」
「いや。それだと顔が割れる」
「面を付ければいい」
「だが」
それでは、人間の姿では、戦闘力が下がる。人狼化して、短期戦に持ち込むしかない。
「だが、なに?」
「人狼になって短期戦に持ち込んだ方が確実だ」
「そうですね。あなたは人狼の姿を長時間、維持することができないらしいですから」
「ちっ」
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