元両片想いカップル編
どうやらこのクラスに、じれったい両片想いカップルがいたらしい。
両片想いの状態でカップルと呼ぶのかは定かでないが、噂によるともう両片想いではなくなったらしいので、もうシンプルにバカップルと呼ばれているそうだ。
一体どこのどいつらなんだ本当に。
「小山くーん、なぁーんで今日そんな遠いん?」
「…遠くないもん」
「おれの膝座りなよ、いつもみたいに」
「隣の席だし座らない」
「でも今更じゃない?誰も気にしてないって」
「俺がする…」
「ふうん。じゃあおれが小山くんの膝に座るか…」
「待て待て待て重すぎて無理だから!ちょ、マジで座ろうとすんな馬鹿!!」
「冗談だって、ほらこれでいつも通り!」
「結局こうなる…」
「でもさ、実際おれの膝のが座り心地好くない?」
「よくない…多分」
「いいんだな」
「あのさ四宮」
「なぁに?小山くん。放課後またあのカフェ行く?それともおれん家来る?」
「カフェは行くけどお前ん家は行かない」
「今日誰も居ないのに」
今日も今日とて飄々と俺を馬鹿にする友達…だった彼を睨みつけてやろうと後ろを向いた俺が馬鹿だった。ぎらりと、あの日至近距離で見た眩いにもほどがある光が新緑の中に一瞬光ったのを見つけてしまい、思わずかあぁっと顔に熱が集まる。
後ろから抱き締めてくる手の平の熱さも、今まで当たり前だったはずのこの距離も…俺はまだまだ慣れることができそうにない。ていうかさ。
「それよりさ」
「スルーなんだ。まぁいいや、どうしたの」
「なんかさ、最近クラスのみんなの視線が生温かい気がするんだ」
クラスっていうか、俺の気のせいでなければ学校中かな。それはさすがに自意識過剰だよなと思って少し俯いていた視線を上げると、彼はふっと息を漏らしたかと思えば少年みたいな屈託のない笑みを俺に向けた。周囲の色めき立つ声なんかもう気にならないくらい、マジですげー楽しそうっていうか、嬉しそうに笑うもんだから、せっかく引いてきていた熱がまた頬に集まる。ほんとなんなの、ずるいんじゃないのこいつ。
…ずるいんじゃないの。
「あははっ!小山くんさぁ」
「なんだよ」
「気づくの遅すぎ」
「うるせぇ」
俺の探していた両片想いカップルはもうこのクラスにはいないらしい。
けれど代わりに、やっぱり四六時中一緒にいて距離が近くて自覚してもいちゃついている片方たまにガラが悪くて片方鈍感なバカップルがいるらしい。
本当に一体どこのどいつらなんだその馬鹿どもは。
顔あつ…。
「また赤くなってる。食べていい?」
「だめに決まってんだろばか」
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