季節はもう暑いと思うこともある。そんな街。
秋森穂乃果は優秀な弁護士だ。ただその戦い方は普通とは違う。彼女は裁判によらない戦い方を得意としているのだ。
そんな彼女が桜の花びらの舞終わりそうな道を歩いていた。
「良い季節だ」
隣の助手である前島芳樹にはなしかける。彼はパラリーガルとして働いて秋森の助手をしているが、弁護士を目指しているわけじゃない。今の助手という立場で十分だと思っていた。
「そうですか? もう桜も終わりになってますよ」
「それが良いんじゃないか!」
少し秋森はわけのわからないことを話している。もう付き合いも長い前島にもその意図はわからなかった。
不思議そうな前島の表情を見て秋森は「確かに花としては満開の時期がきれいだな」なんて当然のことを語る。しかし、彼女の話は続いた。
「だけどさー。そんな時期はみんな集まるから人でごった返すじゃないか。花見をしてるんだか、人見をしてるんだかわからない」
その言葉を聞いて「あー」と納得した声をあげてから前島も話す。
「親分って、案外人込みキライですよね」
「あんなもん好きな人間がいるのか?」
それは納得できる。前島も人込みはそんなに好きではない。これは誰だってそうだろう。 そして今はもう桜の花は結構散っているのでもう「桜がきれい」なんて人はほとんどいない。桜なんて咲き始めを嬉しがる人は居ても、散り終わりに近い葉も多くなった今を好む人なんてまずいない。秋森以外には。
「まあこの時期になるとこの辺も静かになりますからね」 二人の歩いているところは隣に公園があって、花見シーズンにはそれはもう桜とブルーシートのコントラストが映えるところだ。
しかし、今はもう閑散として公園には人が少なかった。
「これを良い季節と言わずしてなんと言う?」
「親分はあまのじゃくなんですから」
前島のため息も静かなので、木霊した。
それに対して秋森は公園を眺めている。この最近仕事を詰め込むようにしていた。その理由は厄介な案件から逃げ自分の好きな仕事をするため。だが、秋森という人間が厄介を呼び込んでしまうのか、結構働きすぎな印象があった。
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