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本棚に追加第三十八話
夏になり、理玖はヴァレットになって初めての長期休暇をもらった。
長期休暇中の10日間は、宮殿の外へ出ることを許される。
実家へ帰省ができるのだ。
「でも、のんびりしちゃいられないな。夏期講習の予約、まだできるかなぁ」
僕は、受験生なんだから!
そんな立派なことを考えながら、バスを降りた。
見慣れた近所の町並みが、やけに懐かしく思われる。
感傷的な気持ちで自宅の鉄扉を開けると、いつものように少し軋んだ音がする。
ちょっぴり泣けるような気持ちを振り払うように、理玖は明るい声を上げた。
「理玖、ただいま帰りましたー! って、何これ!」
玄関のドアを開けると、むせかえるような花の匂いが理玖を包んだのだ。
いや、それだけではない。
いたるところに、高価そうな蘭や、観葉植物の鉢が並んでいる。
大きなアレンジメントに、珍しい品種のバラがあふれかえっている。
変わらないはずの自宅が、異様な雰囲気で理玖を出迎えた。

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