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まず気になったのが容姿だった。注目せずにはいられないほどの美貌だったからだ。骨格身長は確かに男のものなのに、その顔だけは女性のものだった。なにひとつ男としての要素が見当たらない。きっと母親と瓜二つだろうことが容易に想像ついた。アンバランスな人間だ。国王はゆっくり視線を移していく。淡く輝くエメラルドの瞳。そして腰まである薄紫色をした髪。カーディスの王家の証。間違いない。
「いつまで呑気にそんな場所に座っている? 一見若く見えるが、見た目だけで身体は老いているのだとしたら、なんとも情けない国王だな。わたしの主とは天と地の差があるわ!」
まだ喚いている王子に促されてか、ゆっくり国王が立ち上がり下りてくる。その手には剣が握られていた。
「お、案外物分かりが早いじゃないか。まずはそこの慇懃無礼な雑魚の大将として謝罪してもらおうか、謝罪。土下座で…………」
シオンは最後まで話せなかった。いつの間にか間合いを詰めていた国王が剣を抜き、彼が息を呑んだ頃にはばっさりそれを振り下ろしたからだ。
一瞬の出来事だった。
「……な、なにが………」
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