はじまりの風

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 五年前の冬、これまで桜山小学校のシンボルだった樹齢八十年のソメイヨシノの木が惜しまれつつも伐採された。さらに、追い討ちをかけるように桜山小学校は近隣小学校との合併が決まり、廃校となってしまった。  しかし、どうにか小学校を残せないかと、元学校長の染谷さんや地域住民達が立ち上がり、市を巻き込んでのプロジェクトが始まった。私も卒業生として関わりたいと思っていた矢先に、染谷さんから相談を持ちかけられた。 「高木さん、調理師免許を持っていたわよね? カフェのスタッフとして働いてみない?」と。  将来、自分のカフェを持ちたいという夢が突如、目の前に現れたのだ。 「やらせて下さい!」  自分でも驚くほどの即答に、染谷さんがゆっくり考えてと言ってくれた。  冷静になると、転職を考えていたとはいえ三十歳を過ぎてからの挑戦は不安の方が大きかった。  そして、里山の千本桜が満開になった今年の四月、小学校をリノベーションしたカフェがオープンしたのである。 「こんにちは」  元職員室のドアを遠慮がちに開け、染谷さんが顔を覗かせた。 「校長先生! よく、いらっしゃいました。窓際のお席へどうぞ」  思わず緊張で舌を噛んだ。 「高木さんたら。もう、校長ではないのよ」  いつも、背筋が伸びて凛としている染谷さんが、外の様子を見て傷ましそうに瞼を閉じた。 「新米教師の時から見守ってくれていたからね」  大きな切り株の横には、若木の葉が揺れていた。

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