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「ねぇ、抱かないの?」
男はそう言う女を一瞥すると、小さく舌打ちをした。
「お前みたいな女にそんな価値、感じねぇ」
「そう、価値……ないんだ。だよねー」
ひどい言葉を投げられた自覚がないのか、女はあっけらかんとした顔で笑ってみせた。
「下らねぇこと言ってねぇで早く食え。冷めるだろ味噌汁」
「いただきまぁーす」
ズズッとわざと音を立てて、女は味噌汁を口にした。
「溶き卵って、フワフワがいいのかもだけど……このたまにある固まりが好きだな」
男は無言でその様子を眺めた。その時、ほんの僅かだけ、厳しかった口元が綻んだ。
冷蔵庫からタッパーを取り出すと女の前に置いた。
「なぁに?」
「……」
男が答えないから、女はその蓋をあけてみた。
太さがバラバラの昆布佃煮。
「これも手作りなんだ?なんか、すごいね」
(抱く価値がない私なんかに、こんなふうにおもてなしするのは、この人の日常なのかな?)
女の前にドカッと胡座をかいて座り、男が聞いた。
「お前、なんで謝ってたんだ?」
「……へ、いつ?別に謝ってないよ」
「……そうか」
腕を組んで難しい顔をしながら、男は女が食事をしている姿をただ見ていた。
(……俺は、なんでこんな女拾ったんだろう)
――ただなんとなく。
男は、それ以上の理由が浮かばなかった。

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