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本棚に追加 三十分程車を走らせると閑静な住宅街へ入り、朝陽は一軒の住宅の前で車を停めた。
「ほら、着いたよ」
「……はいはい、どーも」
陽向は不貞腐れたままシートベルトを外すと車を降りていき、振り返ることもなくそのまま家の中へ入っていってしまう。
閉まった玄関を見つめた朝陽は小さく溜め息をついた。
「……すみません、弟が色々と失礼なことを」
「ううん、それは全然。でも、本当に良かったの? 陽向くん、まだ怒ってるみたいだったけど……」
亜佑美が心配そうに尋ねると朝陽は苦笑を浮かべながらエンジンをかけ直し、
「大丈夫です。あれも、いつものことですから」
そう言って車をゆっくり発進させた。
再び住宅街を抜ける道を走りながら朝陽はぽつりと口を開いた。
「陽向とは歳が離れているし母親も居なかったから、少しくらいの我が侭なら仕方ないって思っていました。そんな風に甘やかしてしまった結果、あんな我が侭な性格になってしまって……」
「そんな……全部が朝陽くんのせいじゃないよ」
亜佑美の言葉に朝陽は小さく首を振り、苦笑した。
「それでも、兄として責任は感じています」
一拍置いてから朝陽は照れ隠しをするように視線を前へ向けたまま続ける。
「……それに、実は……少しだけ、陽向が羨ましいんです」
「羨ましい?」
「ええ。陽向は背も高いし自分の意思をはっきり言える。人との距離の縮め方も上手くて異性にもよくモテるんです」
そして自虐気味に笑った朝陽は、
「俺には、ああいうところが全然なくて。昔から密かにコンプレックスだったんですよ」
胸の内に秘めた思いを口にした。
それを聞いた亜佑美は意外そうに目を丸くした。
いつも穏やかで誠実な彼が、そんな劣等感を抱えているとは思ってもみなかったからだ。
「私は……そうは思わないけどな」
その一言に朝陽は少し驚いたように亜佑美へ視線を向ける。
「朝陽くんにだって素敵なところが沢山あるもの、比べることなんて無いよ」
優しく微笑む亜佑美の言葉に朝陽の表情は少しだけ和らいでいた。

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