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本棚に追加 田沢くんと歩き回り、田中さんのお宅にも寄って庭の手入れがてら、田中さんからも情報収集し、合計七軒ほどの空き家情報をゲット。
そうして夕方六時すぎに社に戻って、今度は記入した空き家地図をみながら、ブルーマップと照らし合わせて、土地番号を抽出する。それらを会社で登録している登記情報サービスを使い所有者を割り出したのだが。
「言い出した僕が言うのもなんですが、これ、作業効率もコスパも悪すぎますね」
「……だよね。空き家を抽出するのも大変だし、こうやって土地名義人を調べるのに、登記情報サービスを使うと一件三百円くらいかかるよね。それこそ事業にするほど大量の空き家調べたら、コストも高すぎる」
夜も八時すぎ。フロアには私たち二人しかいない。疲れもたまってきたところで、登記情報の細かい文字が、頭に入ってこなくなってきた。
「この名義人、ご存命なのかな」
パソコンに表示されている土地、建物の登記情報。権利関係の更新が昭和四十四年で止まっている。
大手は手を出さないのが、よくわかる。とてもじゃないが、利益が小さいのに、労力ばかりかかる。
「うーん、予想はしていたけど、これは厳しいね」
思わず天井を見上げて、目を閉じる。これは事業として、立ちゆかない可能性が高い。でもここで諦めたら、他にアイディアなんてなかなか浮かばない。どうにかならないものか。
「そうですねえ。とりあえず今日は疲れたし、一旦、終わりにして明日また考えましょうか」
田沢くんの言葉にそうだね、と言って大きく頷く。その時、机の上に置いていたスマホが振動した。母からのメッセージだった。
『今日の夜ご飯、うちで食べるんだよね? 用意してあるよー』
母とはさりげなく仲直りをしていたので、いつも通りの雰囲気に戻っていた。一方引きこもりの兄とは会う機会はなくて、話すこともできず、謝るタイミングもなく、あの時のままだ。
『そろそろ帰るから、食べたい。ありがとう!』
そうメッセージを書いて送信しようとした時だった。
ぐうーーーー
誰もいないフロアに無駄に大きく響いた、お腹の音。顔をあげると、田沢くんが照れたように笑っていた。

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