風船沼にいるアレ

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「あってるけどお前。はっきり言うなあ、あほくさいって」 「あー! 今のナシです! 私の昇進の道がー!」  そんな会話をしているうちに現地に到着した。空き地に車を停めて、まず現地の人を探そうとしたが。 「人っ子一人いない、って言葉がここまで似合う場所も珍しいな」 「まるで世界が滅んだあとみたいですね」  誰もいない、本当に。農業の地域だと聞いていたが、ほぼ荒れ果てている。放置耕作というやつだろう。つまり住民はほぼ農業を引退しているのだ。家を直接訪ねないと人と出会うことはない気がする。 「えっと、私が調べた沼の情報です」  沼は私が調べてきます、というので任せてきた。車の中は雑談で盛り上がってしまって報告を聞くのをすっかり忘れていた。 「曰くつきらしいですねここ」 「ああ、だから選ばれた。そういった話を中心に撮ってこい、って言われたんだが。俺編集で入ってるはずなのに何でこんなこと……」 「まあまあ。松重さんイケメンだから相手も気許しやすいだろ、って内緒話してましたよチーフたちが」 「要するに嫌がらせか」 「何でそうひねくれてるんですか。で、ここの沼は風船沼っていいます。飛んでいくんですかねえこの沼。田畑地域なのにここの水だけは絶対に使ってはいけないって言い伝えられてるんですって」 「なんで?」 「人を襲う妖怪が住んでるらしいです」 「ありがちな昔話だな。ちなみにどんな妖怪?」 「ネットで調べられる情報では女好き、ってこと以外載っていませんでした。現地の人に確認って思ったんですけど。これは難易度高いですなあ」  松重は少し考えて、沼に先に行くことを提案した。どうせモザイクをかけて放送するのだ、現地の人じゃなくてもいい。適当に画像と音声をつなげればいいか、と思い沼だけ撮ることにしたのだ。  契約外の仕事をさせてきた時点でこれから業務環境はもっと悪化するのが確定だ。さっさとやめよう、と投げやりになってきている。もっとも水瀬は続けるようなのであまりにも雑にこなすわけにはいかないが。  沼に来てみると息をのむ。草が生え放題の荒れ放題。それなのに沼だけは妙にきれいなのだ。 「まるで湧水があるみたいな透明度ですね」 「ああ、地下水とかつながってるのかな。ところで、一応実力試しに嘘ついたが。俺の調べを言うぞ」 「あ、やっぱり調べてきてるし」 「そりゃそうだろ。マジで後輩だけにぶん投げるわけねえだろ仕事なのに。アナログをちったぁ頼れ。図書館と市役所はマストだろ」 「えー、あります? 情報」

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