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本棚に追加「……はあ」
集中力の切れたことを自覚しつつ、俺は広げた問題集に持っていたシャーペンを力なく放ると、流れるように体も脱力、座る椅子の背もたれに全体重を預けながら顔を上げた。
自室の白い天井に感化されるかのごとく、頭の中も真っ白になっていく。
窓や壁をすり抜けて響いてくるセミの鳴き声がやかましい。
高三の夏休みで、七月の下旬だった。
夏を制する者は受験を制する、なんて言葉を高三になってからはたびたび耳にしてきたが、だから俺もこうして予備校のない日だってせっせと家で勉強しているのだが、人間の集中力には限界があり、限界を迎えるとトレカの新弾発売日の転売ヤーみたいな勢いで倦怠感が押し寄せてきて、全てがどうでもよくなってしまうというのは、俺が今までの人生で得た知見である。もしも今、手近に鏡があったならそこに映る俺の顔は大層間抜けに違いない。
それにしてもどうしてセミはこのくそ暑いのにこんなにも血気盛んに鳴き喚くことができるのかね、とエアコンが吐き出す冷風を存分に浴びながら俺が考えていると、本棚に刺さっている志望校の赤本の背表紙が目に入った。その大学の偏差値はあまり高くはないものの、かと言って低くもなく、進学先として選ぶにはまさに無難で、
「……」
直近で受けた模試ではA判定も取っている。くわえて高校の担任からも予備校の先生からも「このままいけば絶対受かる」とお墨付きも貰っていた。それと同時に両者からは「今からでも遅くないから、もっと上の大学を目指さないか?」とも言われているが、そんな問いへの返答はいつもノーで……。
何においても上を目指すことはしないと俺は以前に決めたのだ。
背伸びせずとも届く範囲の高さにしかもう俺は手を伸ばさない、と。

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