石筍プリンター

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ぴちょん、ぴちょん。  鍾乳洞の中に響く水滴の音。天井から降ってくる水滴には炭酸カルシウムが含まれている。水分が抜けて成分だけ残ったソレは、滴り落ちた先で蓄積して固まっていく。  まるで地面から生える石のタケノコ、石筍。どんな形になるかは神のみぞ知る。棒状に伸びていくが、不思議とアンバランスでも折れることはない。自然が生み出す芸術だ。だから、はっきりとした形をしているものはあり得ないのだ。 「どうして」  震える声。鍾乳洞に魅せられて日本全国鍾乳洞巡りをするのが趣味な男は、声も体も震えている。棒状ではない石筍は、はっきりとこちらを。  大きく開いた口。助けを呼ぶのか、罵るのか、悲鳴か。まずい、大声を出されたら。近くに折れた小さな石筍があったのは幸いだった。拾って何度も何度も頭を殴りつけた。動かなくなったころ、女の顔の原型はなくなっていた。ただ大きな口を開けた状態以外は。  あの時の、顔。  妻と旅行をして、鍾乳洞の中に入って喧嘩となった。浮気がばれていたのだ。今回の旅行で仲を修復できればと思っていた妻は、夫の身勝手な言い分に証拠を叩きつけて「離婚」「慰謝料」を叫ぶ。  鍾乳洞に響く金切声、不愉快極まりない。そして知人たちにもさらしてやるという言葉にカッとなった。  殴った、何度も何度も顔を。倒れた相手を殴ったら自然と顔を殴る形となったのだ。 ぴちょん     ぴちょん ぴちょんぴちょんぴちょんぴちょんぴちょんぴちょんぴちょんぴちょん

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