Only noise in my ear

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Only noise in my ear

【ノイズしか聞こえない】 その店のドアを開けた途端、耳に届いたザワザワとした雑音は酷く耳障りだった。 「王子様がきたぁー!!」 その声が合図だったみたいに、そこに集まった奴らが一斉に俺を見た。 「わぁ!歩哉(ふみや)くんだぁ!やぁだぁ相変わらずカッコいい!」 「ねぇねぇ、こっち座ってよ」 見覚えのある女たちが詰めて席を空けたが、俺は無視してかつてのダチの隣に座った。 「よぉ、歩哉久しぶりだな!」 「おう、恭介に高ちん、お前成瀬か?久しぶりだな」 ――10年ぶりに集まった中学の同窓会は、男も女もあの頃のガキ臭い顔はしていなくて、どいつも飾り立てていた。 俺は、もしかしてと思って集まった面々を確認したが……やっぱりあの子は居なかった。 「なになに?歩哉誰か探してるの?」 「ああ。白石穂乃香(しらいしほのか)は来てないのか?」 すると名前すら思い出せない女が喚いた。 「ええ?白石ぃ~?なんで歩哉くんがあんなのを……」 そう言ってからハッとして口を押さえた。 「白石って、あれでしょ?風俗で働いてるって噂だよな?」 「あー!そうそう、金井が見たって……ねぇ?」 俺はその場で急に語られだした噂話で、膝の上に置いた拳にちからが入った。 「……だとしても、理由があるんだろ?職業差別とかダセェな」 誰にも聞こえない声を口の中で呟いていた。 ――― 顔を赤らめた連中は、段々と常識や遠慮をなくして、思ったままを口にした。 「白石ってさ、あの頬の傷ちょっとグロかったよな」 その言葉に女どもがコソコソと話し出した。 「あんな目立つ傷でも、そういう店で働けるんだ?」 「逆じゃない?あんな傷あるからそういう世界でしか働けないとか?」 声を落として話してるが、俺には聞こえていて正直怒鳴りたい衝動を抑えるのが難しかった。 「いやいや~整形でもしたんじゃない?流石に無理でしょ、アレみて勃つ男いんのかよ」 女たちの小声の会話を拾った高ちんの言葉に俺は限界になって、席を立った。 「歩哉どうした?おっかない顔して……」 「下らない会話ばっかつまんねぇ。白石に会いたくて来たけど、いねぇし帰るわ」 「……え、歩哉くん……嘘でしょ?」 「……なんで?」 俺が店を出る直前、そいつらの席から聞こえた。 「バケモンに会いたかったって、アイツどうしたんだ?」 その言葉で思い出した。白石の中学の時のあだ名は『バケモノ』だったな。 あの頃の残酷な呼び名で、俺は血が逆流して店の外に出た瞬間壁を思いっきり蹴った。 ――知らないくせに。 白石がすげぇいい子だったのを、アイツらは知りもせずに、ただ顔の傷だけでバケモノ呼ばわりしていた。 俺はあの雨の日に見た白石の姿を思い出していた。 ♢♢♢ 学校の途中の道で、車に跳ねられたらしい猫の死体があったと、その日の朝それをみた級友たちが話題にしていた。 俺もそれを見た。跳ねられた時にガードレールの花壇に落ちたらしいその死体。 ああいうの誰が片付けるんだろうと思っていた。 その日、部活を終え帰宅する時 朝から降っていた雨は激しさを増していた。 傘を差しても横殴りの雨が制服を濡らしてくる。 猫の死体があった花壇に近づくと、屈みながら傘を差していた背中を見た。 それが白石のものだと隣に立ってやっと分かった。 『白石、なにしてんの?』 『あ、園部(そのべ)くん。この子をウチの庭に埋めてあげようかと思って……』 そう言いながら白石は自分のタオルにその猫を包んでいた。怖くないのかな?って俺はちょっとだけビビっていた。 『そういうの、行政がなんとかすんじゃねぇの?』 『そうなんだ?物知りだね。でも、朝から放置されてたみたいだから……』 そう言って立ち上がった白石の腕には、大事そうに抱き抱えたタオルに包まれたソレがあった。 『白石、怖くないの?』 『ちょっと、怖い。死んだ生き物って初めて見たから。でも、可哀相だから……じゃ、園部くん。私帰るね』 片手で猫を抱き抱え、もう片方の手で傘とスクバを持ちながら白石は帰っていった。 俺の家では前に猫を飼っていた。ソイツが亡くなった時のあの悲しさを何故か思い出していた。 『気持ち悪い』とクラスの誰もが言っていた猫の死体を、白石は大事そうに抱えていた。 白石は、なんか……すげぇな 俺はあの日から白石のことが気になって、気がつくといつも白石を目で追っていた。 結局、接点がないまま卒業したけど。 あれからずっと後悔していた。 話しかけて友達になりたかったな。 ♢♢♢ 「白石、どうしてんのかな……」 俺は誰もいない場所で呟いた。 きっと、何か事情があるんだろうな。 そんなところ(風俗)で働いてるって、どんな事情抱えてるんだろう……

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