5人が本棚に入れています
本棚に追加Evil thoughts taking over, I’ma let it go
【ネガティブな思考なんか振り払って、それを手放すさ】
香樹美から連絡が来た。
「歩哉久しぶり!ねぇねぇ、どうしても会わせたい人が来てるの。今からおいでよ」
「え、それ誰だよ。めんどくさいんだけど」
「聡がアメリカから帰国してるんだ。それにもう一人サプライズゲストいるから、おいでよ」
聡か……それは会いたいかも。かつて仲良かったグループで割とよく話していた男の名前を聞いて俺は重たい腰をあげた。
―――
呼び出された店に入ったら偶然、トイレから出てきた香樹美と出くわした。
「あー!遅いよ!聡明日早いからって15分前に帰っちゃったよ~~」
「チッ、なんだよそれ、なら俺も帰るわ」
「まぁまぁ。歩哉が会いたがってた人もいるからさっ」
強引に腕を引かれ、香樹美たちのいる個室に連れていかれた。
そこにいたのは白石さんだった。
「え、なんで白石さんが……?」
「あれ?歩哉ったら、白石さんってすぐ分かったんだ?まぁ、あの傷が目印だもんね」
香樹美はそんな腹立つ言い方をして笑っていた。
白石さんは他の女に挟まれて困った顔をしていた。
「園部くん、こんばんは……」
「やぁだーバケちゃん、声ちっちゃいよぉ」
バケちゃん?その呼び方に俺のこめかみはピクッと反応した。
「琉那、そんな昔のあだ名で呼んだら白石ちゃんに失礼だよぉ~ほら、歩哉も座って。なに飲む?ビール?」
「あぁ……」
居心地の悪そうな白石さんをこの場からすぐに連れ出したいと思ったが、とりあえず俺は香樹美の言葉に素直に従って白石さんの前に座った。
「なんで白石さんがここに?」
「あらぁ、私たちクラスメートだったじゃない。偶然彼女と会ったから旧友として親交を深めたかったのよ。それに、前のクラス会で歩哉が会いたがってたから~~」
―――
「でもさぁ、白石ちゃん仕事大変じゃない?変なお客さんとかいるんでしょー?」
「あ、ううん。そんなことないよ」
「キャハハッ!白石ちゃんすごいのねぇ!度胸あるし、器もでかいじゃーん」
「……そんなことないよ」
消え入りそうな声でひきつった笑顔を見せる白石さんが可哀相になった。
「なぁ、彼女疲れてるじゃないか。もうお開きにしようぜ」
「そっかー!白石ちゃん肉体労働だもんね!ごめんねぇ無理に付き合わせて」
「……いえ、肉体労働なんてしてないし……大丈夫です」
「わぁ、体力すごーい!」
俺はその瞬間財布から1万円を出してテーブルに強く叩きつけた。
「な、なに?どうしたの歩哉」
「白石さんいこう!これ、俺と彼女の分。足りるだろ?」
白石さんの方へ歩き彼女の腕を掴んで立たせた。
「ちょ、ちょっと歩哉!」
白石さんの隣に座っていた琉那が俺の袖を掴んだから、反射的にそれを振り払った。
「悪いけど俺と白石さんは帰るから!ほら、白石さん。荷物これだけ?お前ら二度と飲みに誘うな!俺も彼女もな!」
彼女のバッグと腕を掴んだまま、俺は店の外へ出た。
後ろでアイツらが喚いていたけど知らねぇ。
―――
「白石さん、はい」
近くの公園でさっき買った水を渡した。
「ありがとう……いただきます」
「なんでアイツらの誘いに乗ったの?昔からああいうズケズケとした言い方する奴らなのに」
「家に誘いに来てくれたの。琉那さんち割と近所だから、たまにスーパーで会ってたけど、いつも挨拶程度だったから」
つまり、わざと誘い出されたんだ?根拠はわかんねぇけどさっきの会話はほぼ悪意しかなかったよな?
「その……俺が来る前に何か聞かれたのか?」
「……私の職場の名前出されてそこで働いてるのか聞かれから……『うん』って言ったらなんかすごいねってやたらと言われた……かな」
「な、なんでそこ誤魔化さないの?」
「え?誤魔化すって……?なぜ?」
「だって……っ!」
白石さんは中学の時から割とそうだった。
利用されたり、嫌な質問されたりしてもいつも素直に答えるし、従うし……。
「白石さん、さっきの悪意ばっかりだった言い方とかに気がついてないの?」
「……悪意かぁ。私は別に何とも思ってないから、成立してないよ?」
「どこまでお人好しなんだよ!もっとさ……プライドとか持ちなよ!」
つい、声が大きくなった。だって、白石さんはただの鈍感じゃない。分かってて受け流してる。でも、気分は良くないはずだ。
「お人好しとかじゃないの。プライドはあるよ?でもね、他人って自分の思い込みで他者を判断したがるから……抗っても意味ないの。それに、私もいちいち相手の誤解とか、訂正するみたいな親切心はないんだよ?」

最初のコメントを投稿しよう!