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本棚に追加「ああ、佐竹さん夫妻だな。今日はもう帰るのか。あの二人は街から通いで来ているらしいからな」
途端に春人から離れ、グラスに口を付けながら怜は言う。春人の視線の先で、惣一郎は背を屈め、小柄な二人に柔らかい眼差しを向けている。その様子は自分の親や、祖父母にでも対しているような様子だった。話しかけられている老夫婦の方も、惣一郎の腕に手を触れ、自分たちがいなくても大丈夫か、何度も確認している。
「あの二人は惣一郎の小さい頃から、霧島家に仕えている人たちだからな。惣一郎にとっては、本当の親以上の存在だ」
「本当の親以上……ですか?」
問い返すと、怜は苦笑してちらりと春人を見る。
「少し話しすぎた。中途半端になって悪いが、この辺にしておこう。それと……」
怜はふっと、その美しい瞳に憂いの色を滲ませた。
「もし気が向いたら、あいつの力になってやってほしい」
「え……?」
しかし、問い返そうとする春人の肩を怜は軽く叩く。なんとなく煮え切らないものを抱えつつ、春人もまた頷き、ふっと息をつく。なんだかいろいろありすぎた一日だったなと、春人は振り返った。
その後、遅い時間になっても皆なかなか部屋へ帰ろうとはしなかった。作家たちも、紅子や高見も、このメンバーで集まるのは久しぶりだったらしく、話は尽きないらしい。春人もまた、憧れの作家たちとの夢のひとときに、緊張しつつも時間を忘れていた。
「やあ、春人くん。楽しんでる?」
つい先ほどまで惣一郎と話していた潮見がやってきて、話し込んでいた怜と春人に手を上げる。
「潮見先生!」
嬉しそうに声を上げる春人に、にこりと微笑んで潮見は話の輪にすんなりと加わる。
「潮見先生、良かったらお酒、もらってきましょうか? お好みはウイスキーでしたっけ?」
「なんでもいいんだ。それより済まない。お願いするよ」
怜は気さくに手を上げ、潮見の持っていたグラスを持って、カウンターバーの方へ歩いてゆく。
「顔色が悪いね」
怜が去ると、潮見は少し顔を寄せ、春人の顔を覗き込んだ。
「ごめんね。僕は医者でもあるから、つい気になっちゃって。最初から思ってたけど、君、少し細すぎるよ。ちゃんと食べてないんじゃない?」
「あ、その……最近、あまり食欲がなくて……」

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