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夏も真っ盛りだというのに昨日からの雨で空は薄暗く感じられた。
九州地方の雨は台風でもないかぎり、いきなり降っていきなり上がる、そんな感覚だった。
「天気悪いところだろ」
フロントガラスから天気をうかがっていた涼に悟郎が言った。
悟郎という男は本名を伊東 佐悟郎と言った。
涼とは熊本の街中にある飲み屋で知り合った。
めんどくさがりの涼が佐の字をとって悟郎と呼び始めたら、それが通り名になってしまっていた。本人も自分のことを悟郎と言っている。
「お前からやばめのことが起きたって言うから少し調べさせてもらったぜ。」
悟郎が言う。
「なんか、わかったか?」
「お前、妹がいたんだな。」
「あぁ。」
「残念だったな。」
「あぁ。」
涼は空を見ながら返事をしている。
「行ってみるだろ。現場に」
「入れるのか?」
「現場検証も終わってるから、普通の寺だし入れるだろう」
悟郎は簡単そうに言う。
「頼む。」
再び涼は空を見ながら答えた。
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