冬子

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冬子

空からは雨が降り町を濡らしている。 自室でねむっていた冬子は携帯の音で目をさました。 西御父 冬子(さいおんじ ふゆこ)。 今年でもう三十歳になる。 小さな頃は身体が弱く生れつき目が弱く、真っ暗な闇の世界が冬子の世界だった。 目の見えない子供だった冬子は六歳の時に偶然に病院の中で一人の少年と出会った。 出会ったと言っても目が見えないので少年を見た訳ではないがいつもラベンダーの香りがした事を覚えている。 病室で眠っている冬子の所に少年は現れ 『おねぇちゃん。大丈夫?』 と冬子の瞼を軽く触れて行った。 驚いた冬子だったがラベンダーのいい香りの中で冬子は再び眠りについた。 そして、その翌日である微かに冬子の世界の中に光がさすようになっていたのである。
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