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本棚に追加「約束通り応募しといたからな」
スマホから顔を上げると、新侍が目の前にいる。オレは返事をしたが聞こえなかったようだ 。駅のホームに入ってきた通過電車が強烈な熱風を連れて走り抜ける。制服のカッターシャツは見事にあおられ乱される。今日の風はいつもより、かなり強風 だ。
「もうできた?早すぎね?」
「おう、ちょろいもんだぜ。AI で パパっと完了」
「マジでか」
「花火大会の感動は、熱が冷めないうちに書くべきだろ?」
「そんなに花火良かったか?
スターマイン、わりとすぐ終わったぞ」
昨日は新侍と花火大会に出かけた。行きも帰りもホームには客が押し寄せて、大変だった。電車に乗るのも苦労した。新侍も帰りは無言だったから、オレと同じでうんざりしてると思ってたのに、違うのかよ。
市役所では毎年、夏の花火大会が開催される。
同時に祭りを盛り上げるフォトコンテストも行われるが、今年は開催50回目を記念して「エピソード」部門が新設された。
『夏のわいわい お祭りフェスタ』を楽しもう!
のポスターのもと、花火大会にまつわるエピソードを募集。しかも AI 使用OKだ。400字以上での募集をお待ちしております。とある。
しかも 副賞は、来年の花火大会の有料観覧席ペアチケットをくれるそうだ。
たまたま会場で合流したクラスの女子グループに聞いた。しかもラッキーなことに、一緒に花火を見る流れになって
「みんなで書いてみようよ」
と言われたら「やるしかねえ」と言うしかない。
もちろんその場のノリにすぎない。誰が見てもわかることだが、なんで新侍は真に受けたんだ。
オレは言われるまですっかり忘れていたのにな。
でも新侍が何を書いたかのか気になる。電車はまだ来ない。オレはスマホを開いて、早速花火大会のサイトを探す。
応募作品は誰でも閲覧可能になっているが、もちろん氏名は出てこない。新侍がニヤニヤしながらオレのスマホ画面をのぞきこむ。
「見てもわからんと思うぞ」
「なんだそれ、むかつく。ぜってぇ見つける」
「ハハハ。まあ頑張ってみたまえ」
画面を次々とスクロールしていくと、新侍はイヤホンがない、と肩にかけたスポーツバックを下に下ろし、中をゴソゴソ 探し始める。
まだ応募から1日しか経っていない。花火の思い出が多く、せいぜい30人が書いたというところだ。
読んでもAIが書いたのか、人間が書いたのか見分けがつかないが、スクロールの指が止まる。
「……え?」
やがてオレの目が『見えない花火』と題される話に釘付けとなるまで、そんなに時間はかからなかった。

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