始まり

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ねぇ…泣かないで、ねぇ…泣いちゃダメだよ。 どうして君は泣いているの?なんで泣き止まないの? 僕は、また同じ夢を見ていた。 ここ最近、僕の夢の中で誰かが泣いている。文字通り誰なのか僕にはわからない。小さい子供だと思うが輪郭がぼやけていて性別すらわからないのだ。 そんな夢で目を覚ました僕の部屋は二階の角部屋である。小鳥が囀っていて普通だったら気分がいいのだが、そんな気分になれない夢だった。 眠気眼をこすり窓を見ればお隣さん家??幼なじみの奈緒(なお)の部屋が見え、幼稚園から一緒の腐れ縁って新学期早々校舎内で出会えば連れにわざわざ冗談混じりで紹介し合う間柄だ。 「今年は同じクラスになれるといいなぁ」と、脳裏に残る誰かの泣け声をかき消す為につぶやいてみた。 一階に降りると、朝食の用意がしてあった。しかし、めずらしく食欲がない。もう行くとするか。 「行ってきまーす」 自転車に乗り、隣の家の門脇に視線を投げる。どうやら、珍しく奈緒が先に登校してしまったようだ。力いっぱいペダルをふみこむ。 僕の街は、国は少子化だって言うのに何故か学生が沢山いる。そのせいか、クラスもやたらとある。名前を知らない人も沢山居ると思う。 今日もいつもと変わらない通学路を通っていた。変わったのは冬景色から色彩鮮やかな桜並木に桜吹雪が情緒を出していることくらいか。 そう、今日から新学期になる。 …ふと、道端を見ると、女の子が自転車のチェーンを直していた。何の気無しに彼女に駆け寄る。あからさまに困ってるオーラが出ていたんだ。 「ねぇ、大丈夫?手伝うよ!」 どうやら、僕と同じ学校に通う人のようだ。科章の色を見ると同じ色。…だが、見たことがない。多分違うクラスの人だと思う。 「えぇ…と、私不器用で、こう言うの出来ないんです」 「じゃ、任せて下さい」 僕は器用でも無いが、不器用でも無いので、このくらいなら直ぐに直せる。
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