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サクラ
はらはらと。
一面の桜吹雪だった。花びらが薄桃色のカーテンとなって舞い落ちている。
幻想的の光景だった。そして、目の前に桜の樹があった。
(………夢?)
俺は自分の夢の中にいる。
どっしりと地に根を生やし、他の桜を圧して咲き誇ってる。
この樹は俺が住んでる街で有名な桜の樹。
その姿は荘厳でさえあった。ここまでくると、もはや普通の樹ではない。
なにか神秘的な意思さえ宿していても不思議ではなかった。
この桜は、ずっと見つめてきたのだ。
俺らが生まれるより、遥か昔からある
そして、おそらくは、俺らがいなくても。
出会いと別れを。
喜びと悲しみを。
過ちと償いを。だからこそ、これほど狂おしく咲き誇ってる。
まるで明日がないかのような勢いで。
はらはらと借しげもなく舞い落ちてゆく花びらを眺めていると、怖いような、切ないような、悲しいような、不思議な気持ちになる。
散るからこそ、桜の花は美しい。
だが、この桜が枯れることはない。春だけでなく夏も、秋も、冬も。
一年中咲きつづけてる奇跡な桜だった。何故そうなったのか、誰も知らない。
だから、街の皆はこの樹のことを「枯れない桜」って呼んでいる。
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