二人

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「お前がそんなだから!」 「何よ!私が悪いの!」 「ああ、そうだ!お前が由紀恵を!」 一階から怒鳴り声が聞こえる。まあ、いつもの事だし、私は慣れている。両親の喧嘩の理由は決まって私だ。人を刺した、人を殴った、人に怪我をさせた。そうなった訳を、両親は互いに譲りあう。なんて仲良し夫婦なんだろう。自然と笑みがこぼれた。 「あ、アニメの時間だ」 壁に掛かった古い時計が視界に入った。暗い六畳程の部屋に、一ケ所だけ明りが灯される。 「やっぱり、オープニングは良いな……」 テレビの中を自在に、動き回って、別の世界で闘うキャラクターを、きっと愛しい気に眺めた。途端、パリン、と硝子が弾ける音がした。二度、三度、四度目が鳴るあたりで、私は遥子となる。 「うるせえんだよ!クソ親が!」 二階の自室から放った叫びは、面白さを感じる位に喧騒を止めた。 「ありがとう……遥子」 謝礼を述べ、またテレビへと釘付けになった。こうやって、私の時間は過ぎていく。
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