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ただの彼女のワガママ。
そういえばそうなのかもしれない。
だが彼女としては僕が変わっていくのがたまらなく我慢できなかったのだろう。
『…ごちそうさまです。帰りましょうか?』
『あっ…あぁそうだな。』
彼女は親の仕事の関係上編入させられたが、また前の会社に戻ったらしく、住む場所こそ違うものの、前住んでいたところの近くにもどってきたらしい。
初めはなんで昔の場所にもどってきたのかと思い尋ねると、彼女は別にむこうでよかったのだが、親がどうせなら住み慣れた場所でとのことで引越しを決めたらしい。
帰りの電車に揺られながらも、理由を聞いたのが少し気まずくなり、お互い会話もなく駅に着いた。
『送ってくよ。』
『…お願いします。』
空は一面の星たちで綺麗に彩られている。
『…ホントはさ』
『はい?』
『ホントはいろいろ美帆ちゃんに言いたいこととかあったんだ。こうしろああしろじゃないけど…少し変わってほしいところもあった。でも別れたくなかったし、君が好きだったから安全に安全にいこうとして…全く皮肉な結果になっちゃった。』
『はい。それを私を言ってほしかったんですよ。』
『そうだよね…もっと俺らしくあるべきだったんだよな。』
『はい!それが一番の先輩の素敵な姿ですよ!』
彼女の家まではあっという間でもう目前に近づいてきた。
『ねぇ。』
『?
なんですか?』
『ちょっと背伸びしてみてよ。』
『えっ?なんでですか?』
『いいから!』
『もう…』
僕は勇気を振り絞って、出会った日の夜彼女にされたことを彼女の唇にそっとかえした。
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