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緩んだ腕からカーリー様が脱出すると、僕を見てにやりと笑った。
自分の息をのむ音が聞こえる…
そいつはカーリーと同じ桃色にも緋色にも見える頭髪をしていた。繊細なそれらの糸を長く伸ばし、三枝に分かれた足の指に絡みつくようにたゆたっている。
体は一見では魔の者と見間違うほどに人間とは程遠い。
その目を艶やかな花の模様を刺繍した布で隠し、同じ布を腰に巻いている。
着衣といえばそれだけで、腕のような所には、指らしきものはあるものの、腕から生えている3対ずつの翼が鳥とも付かない異様な姿を形作っている。
そして下半身は全くの鳥だといっていい。鳥と人間の特徴を捻じ曲げて掛け合わせると、このような姿になるのだろうか。
この姿。
砂漠で襲われたグリディオスのそれと何となく同じ雰囲気をもっていた。
個性を隠す目隠し。
奇怪な翼。
「ね?同類」
それは僕の方を向いた。視線がどこにあるかわからないけれど、確実に僕を見ている。
これが精霊…。
自分の人間に近い姿に軽い違和感を覚えつつ、その者を凝視せずにはいられなかった。
「綺麗な水色の髪…うっとりするわね。整った顔立ちだけでもいい男に見えるけれど、この幻想的な美は精霊そのものよ…。彼の姿もきちんと見てあげて?」
言われなくともそうせざるをえない。
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