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小さなエネルギー体である妖精の一人がキャロルの首の辺りを掴む。もう一人は鼻をつまんでなにか囁いていた。
まぁその行動自体には特に意味はないのだが、用は体に何か不可視なものがやってきているらしく、それから身を守るために熱が出ているのだという。
目を凝らしてみれば、僅かに体から何か糸のようなものどこからか繋がっていた。彼女らが何かキャロルさんにやっていると、それはぷつりと切れて、
彼女の顔色は穏やかになっていったのだった。
そう、昨夜起こったのはそれだけなんだ。
それ以外は、まだ分からない…
「すいません、貴方達にも僕に聞きたいことはあるでしょうが、僕にも精霊として聞きたいことがあるんです。それを許していただけるなら続けます。
僕はこの世に生まれて…いえ、きっと存在が生まれたのはずっと前なんですけど、大地を踏みしめたのはついこないだなんです」
「つづけて?」
グーロッドが興味深く食いついてきた。
「僕は、精霊の力が無いんです。この世に生まれたとき真っ先に見つけたのは、僕をゆすり起こしてくれた人間が溺れて死にかけていた場面…それを救うのに僕は妖精に力を貸してもらったんですよ!?
情けないですね。何も出来ないんです。僕には、貴方のような土地に棲む精霊ではないんです。でも、僕が存在しているからには何か元になっているものがあるはず…それはなんなんでしょう。生まれたばかりの僕にはうまく探れません…」
グーロッドは、僕の肩くらいしかない身長で、椅子に座っている僕の目の前に立った。
その両腕をゆっくりと持ち上げ、僕の体を両手の翼で包む。
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