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目の前には、いかにも歩兵に追い詰められたかのように佇む魔の者がいた。
それは多数の兵を見ると、紅い唇がおぞましいまでに頬の辺りまで裂けだした。
笑っているのだ。
その表情を見て一瞬どよりとする兵士達。
しかし一人が構えを取ったまま彼女に向かって駆け出すと、後の者も続いて駆け出した。
あれは…やられにいってるようなものではないですか!!
何か…出来ないのですか僕は!!
と、見ていると、歩兵が魔の者の御腕の餌食になっている隙に、隊の前列の魔術師が射程範囲に到着したらしい。
そして慣れた動きでクラブを振る。
魔の者に緊縛呪文を放ったのだ。
魔力は術に変換する際の手間として、魔術構成を必要とするのだ。
それは棒状の武器、クラブやメイス等扱いやすい簡単な武器に言葉を刻み、また衣類に術の意味を示す記号や文字として縫い付けられたり、宝石に構成を刻んだりもする。
それらを最大限に生かすと、術者は魔力を流してやるだけで術の発動が可能になる。呪文の必要な魔術世界において反則的最速魔術師の完成である。
その成果は、魔術隊が到着してから魔の者と対峙するその瞬間に、神速の速さでで発揮されたのだ。
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