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何も無い空から現れたのは、黒い半透明の巨大なおてて。
それが、ワイバーンを頭から鷲掴みにして熱い熱い砂の地面にたたきつけたのだった。
「ぎゅふ」とかいう空気が突然肺から漏れたような音を出して、ワイバーンは黒い手とともに砂に半分ほど埋まってしまった。
そしてオレはつぶされたそいつを上から優雅に眺めるのだった。
どうだいっ。
森から元にもどった砂漠の横断を行うために、ずっと用意しておいた魔の物の体の一部を召喚するこの魔法。
呼びっぱなしだと全身重りを引きずったような疲労感があるのだが、急な危険に対応するにはなかなか便利でいいのである。
まぁオレ、天才、だし!
呼びっぱなしでも全然大丈夫なんだから。
…とかいう大口、一日だけならば、言える力量。それがオレ。
ちなみにこの召喚術、一度戻すとまた呼び出すのに時間がかかってしまうので、空の狭い街中にいるとき意外は大体来てもらっていたりする。
で、その翼ごとむんずり握られて身動きとれないでいる彼は、クァーと情けない声でオレに開放を求めていた。
マジマジマジ!森を出てからずっと目つけられてるんだこいつに!
オレはその頭を上からぐりぐり押さえつけながらこう言った。
「いいかげんにしないとその翼をちょんぎってトカゲにしちゃうぞこの!もう襲ってくるなよ!わかった!?」
じたばたじた。
砂を飛ばしつつ抵抗を見せるそのワイバーン。ちょっと悲しげな顔をしているそれを見る優越感。
そんな顔されたらたまらんってば~。
しかし。
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