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…暗い闇の中、雨飛沫が全身を突き刺していく。着物にボロ布を纏った少女が、息を切らせ、誰かに手を引かれながら狭く入り乱れた路地を駆け抜けている。
行く道を唯一照らしている月明かりはあまりにも弱々しく、終わることのない闇はどこまでも道を覆い続けていく。
ふと。
背後から怒濤のような叫びが聞こえ、少女が振り返る。
『止まるんじゃない!走り続けろ!』
少女の手を引いていた、少女より多少大人びた少年が、手に今までよりもさらに力を込め、叫んだ。
それに気づいた少女は少年に言われたとおり、自らが出し切れる早さで再び走り続けた。
…しかし。
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