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ガサッ…パキッ… 異形の姿が、山中の藪を進んでいた。 昼の日差しは、その姿を闇から抜き出している。 昆虫を想像させる、その巨大な目は、 黒光りして周りの風景を映し出していた。 時折、木の枝が折れて手足を強く弾くも、 その硬質な身体に傷を付ける事はなかった。 … …不意に藪が開け、視界が広がった。 眼下には松山市へと繋がる人間の領域が始まっている。 足元に広がる街並みを眺め、やがて目線をあげ…遥か先を見つめる… …異形の物は、山を降りて行った。
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