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…
泥のような眠りから、彰二は目を覚ました。
ぼんやりとした頭の中で、昨夜の記憶が蘇ってきた。
(あれは…まぼろしか…)
寝起きの頭では、いよいよ確信が持てなかった。
時間を見ると、午後3時。
七時間も寝た自分にあきれる。
(…もし…あれが現実だったとして…どうやってヤツを探すか…)
タバコの箱を探るが、あいにく空だった。
しかたなく、灰皿から吸い差しのタバコを拾う。
火をつけて、テレビをいれた。
…
『…現在は周辺の住民に、避難勧告が出されています。
あ…
現場との中継が繋がった模様です。
現場の中島さん、どうぞ』
住宅地を映し出す画面には、[松山から生中継]の文字が張り付いていた。
『現場の松山市から中継します。
松山市西部で発見された怪物は、現在は古川町付近を移動中です。
』
ローカルな情報番組で見るリポーターが、緊張したおもむきで話していた。
『中島さん。これまでの流れと被害状況を教えて下さい。』
『はい。
今日正午ごろに、初めて目撃された生き物は、住民が遠巻きに見守る中、悠々と歩いていたそうです。
捕まえようと飛びかかった男性は、この生き物に反撃され病院に運ばれ、重体です。
その後、騒ぎを聞きつけた近くの高校生数名が、同じ様に捕獲を試み、重軽傷を負っています。』
『…現在の警察の動きはどうですか?』
『幾度か停止を試みた模様ですが、現在は被害が広がるのを防ぐ事に重点を置いている模様です。…
あ、こちらで何か動きがあったみたいです』
住宅街の道路に張られたテープの内外には、多数の警官がウロウロしていた。
手前の方には警官が人垣を作り、その先が見えないようにしている。
が…
今は人垣が割れている。
その間から、はるか先の路上が映し出された。
…
一体の人影がゆっくりと歩いている…
画像が拡大される…
黒光りする昆虫のような身体…
(…ヤツだ…)
旋律が走った。
背中が凍りつくのがわかった…
テレビでは、絶叫口調のレポートが続けられていたが、彰二の耳には入らなかった。
昨夜の…あの恐ろしい光景が、脳裏の中で再現されていたからだ。
(アイツに挑みかかるなんて…死にに行くようなもんだろ…)
…
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