オヤジの最期

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携帯で聞いた住所と病院名をタクシーにいって到着。 え、個室。 人工呼吸の拒否を見えないものをはたき落とすような仕草でオヤジが弱々しくしている。 マジか。 点滴のパック名をみる。 アルブミン。 やばすぎる時の気休めじゃんか。 ベッドの傍らにいる母さんは、いつもとは違う調子であやまる。 「建一ごめんね。お母さんね、お父さんがまさか末期ガンなんてわからなかったの。ごめんね」 そのまま力なく泣き崩れていく母さんとは対称的に、オヤジがオレに視線を合わせて、腕にすがりついてきた。 「い、医院を頼む。医院を」 それが最期の言葉になった。
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