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俺も葬儀に参列する機会は多い。
黒の身体の線が分かる程のワンピース。色だけ喪服といえなくもない。
明るい水色に染めた髪。人類には人工的でない限り、発現しない色素だから。
同じ理由で瞳のカラーコンタクト。紅い。
別に作法にやかましいタイプじゃないけど驚いた。
こんな時にさわやかな笑顔で香典、厚いを渡された。
「患者様一同で申し訳ないですわ。私以外は葬儀には顔が出せない身体なものですから」
出雲の言葉に涙を押さえながら母さんが尋ねる。
「主人は、患者様のお役に立てていたのでしょうか」
出雲の笑顔はくずれない。
「もちろんですわ。奥様。後任の先生を、お迎えに行くように老先生から承って参りましたんですわ」
笑顔と紅い眼が俺に固定されてる。
「俺は後継ぐ気ないから……出雲さん?」
この会話の間にも、正面玄関出口の前に停めてある真っ赤な?……フェラーリか? に連れ込まれる俺。
ドアに頭ぶつけーの、天井で側頭部こすりーのしながら抵抗する。
「俺はオヤジの医院なんて継ぎたくない」
出雲はふっと笑って、呟いた。
「継ぐか継がないかは、医院に行けばわかりますわ。開院時間まで時間がありませんわ。シートベルトを」
爆音と共にタイヤを焼き切る甲高い音が響いて、俺は拉致された。
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