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医院の中は今どきにしては暗い印象を受けた。
カーテンが隙間なく引いてあるからか。照明の灯りを落としてあるせいだろうか。
一つしかない診察室へ入る。椅子に無造作にかけられた白衣に、衛生管理はこれでいいのか。疑問が浮かぶ。
普通なら、こんな時オヤジの顔くらい浮かぶんだろうな。
生まれて初めて医院にきたのであまり感傷にはひたれないな。
「先生患者さんですわ」
出雲の声に慌てて喪服を脱ぐ。近くにオヤジのスウェットが何枚かあったから、急いで着て、白衣を取り敢えずはおる。
椅子に腰かけて、散らかった机の上に片腕を乗せる。転がった文房具を腕で隅に押しやる。
一人で診察は厳密にいえば初めてだ。出雲がカルテを持ってくる。
心臓の位置がわかるくらい緊張が高ぶる。
なんだ?これは?
風呂に入ってないのとも、違う異臭。
思い出すのは、大学時代、農学部の連中と牛の頭埋めたら浅かったらしくて、肉の腐臭がただよって事務官に怒られた時の臭いだ。
診察室のカーテンが開いてオレは内科医なのになぜ?色んな意味で相当困った。
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