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しかし、私は世界征服なんか望まない。
私が望むのはただひとつ、あの事故をなかったことに……それだけだ。
その時、ふと思った。
「なんか話、うますぎじゃない……?」
「………………そんなことないよ」
すぐに答えないところが妙に怪しい。
「…………」
私は何も言わず、じっと見つめ続けた。
「…………」
期待はしてなかったが当然のように少年も何も言わない。
ところが、沈黙を守っていた少年がいきなり口を開いた。
「そういえば代償があったかも……」
「なっ……!! だ、代償って……そんな大事なこと隠してちゃマズいでしょ!! なんで言ってくれないのよ!?」
私は心底驚き、少年におもいきり食ってかかった。
「隠してないよ、今言ったでしょ?」
「…………」
言葉にならないほど呆れた私だが、少し……ほんの少しだけこの少年を信じていいのか迷った。
しかし答えはとうに出ていたのだ。
代償がなんであろうと、この少年が何者であろうと……あの事故をなかったことに出来るのならば、この少年の言うことに従うだけだ。
私は代償がたとえ命と言われても過去を変えるつもりだったが、それを聞いてしまった。
「代償は…………君の過去だよ」
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