10人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
私が目を覚ますとそこは病院だった。
なんだかやけにリアルな夢を見ていた気がするけど詳しくは覚えていないみたいだ。
私はなんとなく気になった夢の内容を思い出そうと寝起きの頭を覚まそうとした。
しかし、その時すぐ隣で百獣の王の雄叫びかと思うほどの声があがった。
「瞳!? 目が覚めたのね!!」
私が目を覚ましたことがよほど嬉しかったのか、母が大粒の涙を流しながら抱きついてきた。
「お母……さん?」
私は寝起きであまり頭が働いていなかったため母の大声にあまり驚くことなく、すんなりと何の障害もなく母の涙に困惑することになった。
「よかった!! 本当によかったわ!! 目を覚まさなかったらどうしようって……!!」
私が困惑している間にも母の涙と大声は嵐の如く止むことを知らずに勢いを増すばかりだ。
ところが、母の嵐は私の呟いた一言によって勢いを徐々に失っていった。
「私……なんで病院に……?」
「ちょっと瞳……覚えてないの?」
母がぐずぐずと鼻を鳴らしながらも泣くのを止めいぶかしげに聞いてきた。
「少しだけ……」
私はそれだけ言うと後は黙って母の言葉を待った。
最初のコメントを投稿しよう!