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傷タヌキが草むらをくぐって行くと、そこには一匹の綺麗なメスタヌキが居ました。
そのメスのタヌキは、オスを惹きつけるには十分過ぎる程の魅力を持っていました。
しかし、傷タヌキは興味を示しませんでした。
それは狩りに失敗した直後だからなのか、自分の姿に自信が無いからなのか、解りません。
傷タヌキがその場から離れようとした時、一匹のオスタヌキが現れました。
そのオスタヌキは若く、毛並みも綺麗で、何より特徴的だったのは、目が少し青みがかっていた事でした。
傷タヌキは、その青目に興味を持ったのか、草むらの中から様子を見て居ました。
メスタヌキは若いタヌキの青目に興味を持ったのか、その場を離れませんでした。
青目タヌキはメスタヌキに気に入ってもらおうと、自分の餌を上げたり、優しく接したり、おどけて見せたりしていました。
次第にメスタヌキも青目タヌキが気に入って来ました。
それを察した青目タヌキは、素早くメスタヌキの後ろに回り込み、上に乗って腰を振り出しました。
ここに一つの家庭が誕生したようです。
一通りの行為が終わると、青目タヌキは森の奥へと歩き出しました。
メスタヌキが慌てて後を追って行こうとすると、なんと青目タヌキは振り返り、背中の毛を逆立て、牙を向き威嚇したのでした。
これにはメスタヌキはおろか、傷タヌキもビックリしました。
そんな隙を狙って青目タヌキは森の奥へと消えて行きました。
暫くして我に返ったメスタヌキは、青目タヌキを追って森へと消えて行きました。
おそらく見つける事は出来ないでしょう…
ここに一つの家庭が終わったようです。
傷タヌキは、何事も無かったようにスッと立ち上がり、二匹のタヌキとは逆の方向へと消えて行きました。
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