息を忘れる

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腕に絡まる 細い指 かなり力が籠っている 少なくとも目の前の彼女にしたら 時折 俺を悔しそうに睨みつける鋭い視線 そんな表情を彼女にさせているのは 今 俺ただ一人 征服欲に 駆られる 満たされることはないまま このまま 彼女を吸収してやりたい 全部 俺のモノにする その細い首 波打つ心臓の音 汗ばむ肌 一滴残らず 何も残さず 喰らい尽したい 全て吸収した後も 彼女は俺の"中"で生き続ける そんな どろどろとした 黒い欲を 自らの中にみる …なんて、 そんな事 本当にあるとは思ってないが。 ただ そんな衝動に たまに駆られる 愛とか 恋とか ハッキリ言って 明確な区別など全くつけられない 俺らの関係ってそんな感じ 幸いにして この女(ひと)もそれを熟知して割り切ってくれてる ひたすら楽で緩い関係 故に我に帰る事も少なくて済む だが何故だろうか 唇を近付ける 彼女の生命の痕跡 臍近くの肌 吸い付く 息を忘れる 吸いあげる 残ったのは 赤黒い跡 正式に言えば"内出血" 『ッ!!』 彼女からの鋭い声 余計に高ぶってしまうこの征服欲 『…跡付けたの…?何で…』 いぶかしげに俺を見る鋭い視線 『あ…』 情けない事に呆然とする俺。 何やってんだ、俺。 束縛? したかったのか? 俺だけのモノにしたかったのか? 無自覚な事程 呆気に取られる事はない 目を屡々させて俺を見る彼女 そっと 頬に触れる ビクリと彼女の体が揺れた あったかい あったかい あったかい 人って こんなにあったかいもんだっけ すっかり忘れてた ふと 頬に手が添えられる 『あったかいね… それに男の割に肌がきめ細かい』 クスリと笑う彼女を 俺は初めて抱き締めた 『何か久しぶりに"すき"って感覚思い出したかも』 『今更?』 相変わらずの冷たい言葉 『ま、私も久しぶりに初恋思い出した感じだわ』 初めての意思疎通*一致 『じゃあ今度は恋人としてよろしく』 『よろしく』 生命の痕跡付近 張りのある白い肌に 俺が付けた"内出血の跡"残っている コレが体と心が追いついた『初恋』 の始まり
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