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「ユシル…ふん、カミューの代わりに儂の成敗に参ったというわけか」
周囲の喧騒にいらつきながらも、男は心の内に愉快さを覚えずにいられなかった。
平均的な成人男子の背丈を上回るブランディッシュ(大剣)を杖代わりにし、柄の上に両手を重ねている。両腕に浮かぶ巨大なうねりは、長年訓練された馬の胴体を思わせる。白銀の髪は、男の気性を象徴するかのように鋭くとがり、茨のような硬い髭が両頬を覆い隠している。
武王ビンガーその人である。
もはや、一目見る者に嫌悪感を植えつける程にまで分厚く盛り上がった僧坊筋を、小刻みに上下に揺らしながら、ラーク城の王室窓から外を眺めている。
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