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唖然とする星湖。
ティンクは急かす様に腕を引っ張り、星湖をベッドの上に立たせた。
絵本通りにいけば、その後は---
「ままっ、待ってよ!私、空なんて飛べない!」
「何でも良いの。楽しい事を考えるだけよ。」
楽しい事---
楽しい事---
そんなすぐには出てこない。星湖は、必死に思考を巡らせた。
翔一をからかってるとき、藍と話してるとき、………ぁぁああっ後は何があったっけ?
と、病室の外で、誰かが立ち止まる音がしたのをティンクは聞き逃さなかった。
ティンクは軽く舌打ちしてぼそっと「時間切れか」と言った。
「へ?」
「もういいわ。空の飛び方は向こうで教えるから。
とりあえず行くわよ!」
ティンクは、星湖に向かって、「ピーター!」と叫ぶ。
と、星湖の目付きは急に変わり、腰に手を当てにやっと笑った。
「全くしょうがないね星湖は。じゃあ、行こうかティンク。」
易々と星湖と入れ替わり、窓から飛び出したピーターパンに、ティンクは不思議そうに首を傾げていた。
「何?ティンク。」
「いや、どうして入れ替わったまま冒険に出るっていう考えが浮かばないのかしらこの人って思って。」
もっともだ。
「ん~、まぁ、理由は追々話すよ。」
そう言ってはぐらかしながら、ピーターパン(というか星湖)とティンクは、夕陽の沈む空に消えて行った。
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