冒険に危険

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その男は、俺達の前で立ち止まると、恭しく礼をした。 「やぁやぁやぁ、初めまして。」 こういう奴はヤバイと、俺の全身が毛を逆立てて告げていた。一見にこやかで物腰のやわらかそうな中年男性だが、男の瞳からは、狂気だけしか感じとれないからだ。 「なぁに、私は怪しい者ではないよ。皆からは、『船長』と呼ばれている。 君達のお友達が突然消えてしまったと聞いてねぇ、私も及ばずながら力を貸そうと思ったのだよ。」 それはどこか、引っ掛かったもの言いだった。 力が及ばないと言いながら、何か鍵を握っている様な。 「星湖がどこに行ったのか、知ってるのか…?」 俺は半信半疑でその男に問うと、笑みを深めて髭を擦った。 「ええ、場所ならば…ね。」 「どういう事ですか…?」 「彼女は今、此処、いや、この世界には居ないのだよ。謂わば別世界。謂わば、異界。 彼女は『奴』に連れていかれたのだよ。」 「『奴』って…。」 その言葉に、俺は反応した。 「そう、ピーターパンだ。大人にはなりたくないという彼女の思考は、全て前世である奴が作用している。全てはアイツの引き金だ! アイツの自己満足の為に、来世であった彼女は、哀れにも『あの場所』へ行かなくてはならなくなった。可哀想ではないか。」 俺は、この男の話を、いつの間にか真剣に聞いていた。胡散臭い、怪しい男だとか、頭のいってる危険な男だと疑うということは、頭の中からはもう、消え失せていた。
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