危険に過去

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きらびやかな船の装飾とは不釣り合いな程、船員は野蛮だった。 フックと名乗る右手が大きな鍵になっている船長に壇上に案内されるまで、翔一と藍は汚い言葉を浴びせられ、罵られた。 甲板はそんな船員共で、溢れかえっていた。 トランプで賭けをしている者達。 酒を浴びるほど飲む者達。 どこから連れて来たのやら、女と遊んでいる男達。 中には、射撃訓練と称して、捕えた男を的にしている者もいた。 さすがにこの光景には、翔一も藍も顔が青ざめ目を反らせた。 壇上に着いた途端、フックが一つ咳払いした。すると、たったそれだけで、やんややんやと好き勝手騒いでいた連中が、一気におとなしくなり、一斉にこちらを見る。 「ぉー、おー、我が優秀で傲慢な野蛮人共! この度、儂の船に素晴らしい客人を招いた!彼等はあの憎きピーターパンの生まれ変わりの女の友人だ!」 ブーイングとも雄叫びともとれる喚き声。 中には、にやにやと笑みを浮かべる者もいた。 「彼等は彼奴に連れ去られたその友人を助けに異郷、ネバーランドに来た! 何とも泣ける話ではないか!皆の衆、今宵、我等は彼等と手を組み、女を救いだし、あのにっくきピーターパンを八つ裂きにしてやろうではないか!」 ビリビリと海の水面が揺れる程に、男達の声があがる。翔一も藍も、ただ目を見開いてその凄まじい光景を眺めるばかり。 フックは船員を満足そうに見渡すと、二人の背後に立つ。遥かに背の高いフックを不思議そうに見上げていると、海賊共の海の中へ突然突き落とされた。 「「!!?」」 無数の海賊の腕が二人を捕まえる。 縄で縛り上げられ、後頭部に衝撃が走った。気を失う刹那聞こえた狂ったような笑い声が、翔一の耳に入った。 「野郎共!大事な大事な客人だ!丁重になぁ!」 そして巨大な船の下層に造られた薄暗い、じめじめした牢屋の扉が開いた。
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