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朝。
小鳥がさえずりゆっくりとした時間の流れる気持ちの良い朝…
な、訳もなく。
「おかぁさん!どうして起こしてくれなかったのよぉ!!」
ばたばたと階段を駆け降りる娘に、食卓に居る母は呆れたようにため息をついた。
「何度も起こしました。星湖(せいこ)てばちーっとも起きやしないんだから。」
母の文句が聞こえているのかいないのか、娘、星湖は食卓に着くなり、あがっていた朝食を素早く掻き込んでいた。(ちなみに今日の朝食はご飯に味噌汁、焼き秋刀魚と実に日本らしい食事だ。そんなものを掻き込んで詰まらないのか…?)
「星湖アンタ、朝御飯しっかり食べようって気は母さんも感心するけど、もう少し早く起きたらどうなの?」
「ふぁってふぃのふはふはふへほほふはっひゃんひゃほん!」
「何言ってんのかわからないわよ。」
母の言葉に急かされたのか、ごっくんと派手な音をたてて口の中のモノを飲み込むと、先の言い訳を繰り返した。
「だって部活で遅くなっちゃったんだもん!」
「ぁー、ハイハイ。」
軽くあしらう母に、星湖は面白くなさそうに頬を膨らました。
そんな娘の顔を横目で見ながら、不意に意地悪そうな笑みをうかべた。
「それよりいいの?ジ・カ・ン。」
母の指が指した先には、『7時50分』を示すアナログ時計。
星湖の顔色を変えるには、十分過ぎた。
「ち、ち、ち、遅刻ーーーーーー!」
血相を変えて玄関まで走った娘の背中を楽しそうに見つめながら、母は一言呟いた。
「馬鹿ねぇ…。」
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