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今日は一番乗りで学校に着いた。
とは言っても、部活で朝練に来ている生徒や、用務員さんには勝てなかったが。
星湖は未だに来客用スリッパを履いていた。しかし、スリッパは何かと動きにくいし、直で廊下の固さに触れて痛い思いをしているので、実際星湖はそろそろ新しい上履きを買おうと決意していた。
「あれー?星湖じゃん。早いね。」
声のした方を振り返ると、ドアの前で一人の女子生徒がスポーツバッグを片手に立っていた。
「おはよう藍。朝練終わったの?」
「そっ、今終わったとこ。
星湖は?どうしたの珍しい。」
藍はソフトボール部のエースであり、星湖の親友だった。
活発な少女で、どこか、ツンデレの気があると星湖は思っていた。
そんな事はともかく、藍は星湖の話を聞くために、星湖の前の席に座る。ちなみにそこは翔一の席だ。
「…うん、ちょっとね…。」
「あ、もしかして、翔一のファンの子達の事?」
星湖の足元を見て急に険しい顔をした藍に、星湖は両手を振って否定した。
「違う違う!違うの。
…実はね、昨日、おかしな夢を見たの。」
「夢?」
「うん、本当に変な夢でね、ピーターパンの格好した私そっくりの男の子が出てきて、自分の代わりに冒険に出ろって言うの。」
もう、何が何だかと付け足して、星湖は一息つく。
「ねぇ、星湖。アンタはそれをただの夢だと思ってるんでしょう?
だったら、そんなに気にする事ないと思うんだけど。」
「そうなの!そうなんだよね。そうなんだけど…。」
そこまで言って、星湖はおし黙る。
「星湖?」
「あのね、こんなこと言うと、やっぱり変かもしれないんだけど、私、その夢に何だか懐かしい感じがしたの。」
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