現実に冒険

2/10
前へ
/123ページ
次へ
今日は一番乗りで学校に着いた。 とは言っても、部活で朝練に来ている生徒や、用務員さんには勝てなかったが。 星湖は未だに来客用スリッパを履いていた。しかし、スリッパは何かと動きにくいし、直で廊下の固さに触れて痛い思いをしているので、実際星湖はそろそろ新しい上履きを買おうと決意していた。 「あれー?星湖じゃん。早いね。」 声のした方を振り返ると、ドアの前で一人の女子生徒がスポーツバッグを片手に立っていた。 「おはよう藍。朝練終わったの?」 「そっ、今終わったとこ。 星湖は?どうしたの珍しい。」 藍はソフトボール部のエースであり、星湖の親友だった。 活発な少女で、どこか、ツンデレの気があると星湖は思っていた。 そんな事はともかく、藍は星湖の話を聞くために、星湖の前の席に座る。ちなみにそこは翔一の席だ。 「…うん、ちょっとね…。」 「あ、もしかして、翔一のファンの子達の事?」 星湖の足元を見て急に険しい顔をした藍に、星湖は両手を振って否定した。 「違う違う!違うの。 …実はね、昨日、おかしな夢を見たの。」 「夢?」 「うん、本当に変な夢でね、ピーターパンの格好した私そっくりの男の子が出てきて、自分の代わりに冒険に出ろって言うの。」 もう、何が何だかと付け足して、星湖は一息つく。 「ねぇ、星湖。アンタはそれをただの夢だと思ってるんでしょう? だったら、そんなに気にする事ないと思うんだけど。」 「そうなの!そうなんだよね。そうなんだけど…。」 そこまで言って、星湖はおし黙る。 「星湖?」 「あのね、こんなこと言うと、やっぱり変かもしれないんだけど、私、その夢に何だか懐かしい感じがしたの。」
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加