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「懐かしい…?」
ぽつりぽつりと呟くように自分の心情を語る星湖に、藍は眉を寄せた。
「そう、あの男の子も、時計塔も、街も何もかも。
本当にどうしたんだろ私。あんなの見たの、初めてなのに。」
「んなこと言ってぇ、実は夢の中の君に一目惚れしたんじゃないの~?」
どことなく遠い目をし始めた星湖をヤバイと思ったのか、藍は雰囲気を変えるためにこんなことを言った。
藍の予想通り、星湖はカァッと顔が赤くなり、爆発したように藍にそんなんじゃないから!と誤解を解こうとした。
「どうしてそうなるのよ!」
「えー?星湖顔が赤いわよ~?
もしかして本当に一目惚れ?」
「違うったら!」
こんなことで一生懸命になる星湖を、藍は純粋に可愛いと思った。
昔から変わらない、もう高校生なのに子どもの頃のままの星湖。
だが時々、藍は星湖が「大人」になることを拒んでいる気がしてならなかった。
だからそう、藍は星湖のこの話に、少し確信がつけたと思ったのだ。
「翔一、アンタどう思う…?」
突然切り出してきた藍に、戸惑いながらも、翔一は小さな頃の星湖を思い出していた。
確かに、アイツは何も変わらない。今回、藍の話で、それが変わろうとしないに変換される。
「…よし、俺がもう一度探ってみる。もしそれでビンゴってな事になったら、……その時決める。」
「もう!肝心なトコでオツム弱い奴!」
そんなこんなで星湖が本当に大人になりたくないのか、という事を調べに、星湖を探した。
だが、彼らがその疑問を星湖にぶつける事は、もうなかったのだった。
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