Thinking Pork. -解決篇-

9/9
前へ
/52ページ
次へ
「何だか、『人間』でいるのが辛くなってきました」 「……だがなあ、間嶋。我々人間にしか無い、『友情』って概念も、あるだろ?」 「はあ」 「少なくとも浩子さんは、祐加さんの『友情』に見守られて、逝ったんじゃないかな」 『豚肉』にまで自らを貶め、田中浩子は過去に対して贖罪した。 しかし、そんな彼女を、竹口祐加の友情が、『人間』として見送った。 その竹口祐加の『友情』も、過去の田中浩子に対する贖罪なのか。 「豚肉だって思考する……、か」 神妙な面持ちで言う間嶋に対して、新庄がとんでもない事を言い出した。 「……さて。焼肉でも食いに行こうぜ」 「え、ええええ!? しょ、正気ですか新庄さん!」 「正気に決まってるだろう。今の話を聞いて、二、三日だけベジタリアンを気取る方こそ、エゴイズムってモンだ。だがその代わり、しっかり味わって食えよ。そして、残すな」 「し、しかしですねえ」 その言葉と同時に、間嶋の腹が鳴った。 新庄は、『やれやれ』とでも言いたげな視線を彼に送り、既に玄関へと歩き出した。 優花も、複雑な表情を浮かべながら後に続く。 『思考する豚肉』を、残す事無かれ。 間嶋は、ぶるぶるとかぶりを振って、彼らの後を追った。 <了>
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3623人が本棚に入れています
本棚に追加