Thinking Pork. -解決篇-

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<6> あれから、三日後。 新庄央探偵事務所に、あまり良くない報せが届いた。 田中浩子が、治療の甲斐も空しく、糖尿病が併発させた合併症により、息を引き取ったという。 それを電話で告げた田中裕之は、新庄を電話口に呼び出し、彼に何かを告げた。 それからのち、新庄は押し黙ったまま、半分程残っていたメイカーズ・マークのボトルを、ほんの十分足らずで飲み干した。 沈痛な面持ちの新庄に、その場にいた間嶋と優花は、何も聞く事が出来ずにいた。 重苦しい空気が事務所を覆い尽くし、かなり時間が経過してから、新庄が口を開いた。 「……浩子さんが亡くなる間際、彼女が告白したそうだ」 間嶋と優花は、黙ったまま、新庄の言葉に耳を傾けた。 「浩子さんは、竹口祐加さんに、自ら頼んだらしい。自分を 『豚肉』扱いにしてくれ、と」 間嶋と優花が、顔を見合わせる。 「……彼女は、自分を蝕む病魔で、自らの死期を悟った。その上で、過去の自分自身の過ちを、竹口祐加さんに告白した」 新庄が、新しい煙草に灯を点ける。 「……いじめが、また別のいじめを呼んだんだ」 彼のその言葉に、間嶋は思い当たる。 『田中浩子らの同級生が、学校の屋上から飛び降りて、自らの生命を断った』 という、事実。 「……その贖罪として、田中浩子さんは、自らを貶めた。一番仲の良い友人である、竹口祐加さんに頼み、彼女は 『豚』から、更に憐れな 『豚肉』へと、その身を貶めたんだ」 ……自分は『豚』である。 そして、『豚肉』なのだ、と。 「……結局、竹口祐加さんは、最期まで何も語らなかった。浩子さんが息を引き取るまで、ずっと側に居続けたそうだ」 優花が、新庄の前に新しいロックタンブラーを置く。 「……そして彼女が亡くなる前日──昨日の事だな。裕之さんの元に、今回の真相が事細かに記された、もう一冊の手記が届いたそうだ。勿論、差出人は、浩子さんだった」 新庄はまた、その新しい酒を、一気に呷った。 「回りくどい話だが、浩子さんは自らの死を決意して、その最期の刻を、親友である竹口祐加さんとの時間に費やした。……誰にも邪魔されない場所、そして自分の原点とも言うべき、あの場所で」 「……自分の、原点? 養豚場が、ですか?」 堪え切れず、遂に間嶋が口を挟んだ。
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