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灰色午後7時
プレーヤーから音楽が流れてる
小さなベランダで私は煙草を吸う
このまま煙みたいにゆらゆらと消えたい
風が吹けば気持ちいいのに気配すらない
私は世界に大事にされてない
そんなバカなことを思うくらいの元気はある
聞こえてくる音楽にあわせて口笛なんて吹いてみる
あの頃は吹けなかった
くちびるだけは大人になったのかもね
どうでもいい男とキスするくらいなら死ぬまで口笛だけ吹いて生きてやる
煙になれないならしぶとく女をやってくしかない
淑女より娼婦に憧れる
それから母さんみたいにしたたかになりたい
青空も夕焼けもない痛々しい夕方
蝉の声がいつの間にかやんだ
世界は誰も大事になんかしやしない
私は母さんのようにしたたかになって
キスなんてしない冷たい娼婦になるわ
誰も大事にしてくれないなら
私が少しだけ大事にしてあげる
泣くくらいなら目をつむれ
キスするくらいなら口笛
じっとやりすごせば
じきに夜になるよ
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